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評者◆秋竜山
不気味な口笛の音、の巻
No.3524 ・ 2021年12月18日




■千葉公慈『知れば恐ろしい 日本人の風習――「夜に口笛を吹いてはならない」の本当の理由とは――』(河出文庫、本体六六〇円)を、読むと、昔の日本人は風習だらけのなかで生活していたことがわかる。そんな風習も時代と共に、いつしかなくなったというか、忘れられていった。風習が生活の中で生きている時は、それを風習とは思えず、迷信とも思えなかった。
 〈むかしから、夜に口笛を吹くことはタブーとされている。地方によっては、夜に口笛を吹くと蛇が出るともいうが、いずれも不吉だとして戒めてきた。夜に口笛を吹くなど単純に周囲の者は不快であろうから、もちろんマナーとして当然であるが、しかし、その意味まで迷信と片付けてよいのだろうか?〉(本書より)
 子供の頃、祖母に教わったことは、迷信としてではなく、昔からそーいうものだ!! として、聞かされたのであった。それですでに迷信である。しかし、祖母は迷信とはいわなかった。迷信として信じていないので、迷信ということじたいを考えることもなかったろう。いわゆる昔の人である。子供の頃、そのような昔の人に聞かされると、子供心に「ウソだ!! 迷信だよ」なんて考えもなく、ひたすら信じたのであった。迷信とは、字の如くであって迷いなく信じることである。
 〈迷信諸説を挙げてみると、①闇夜を闊歩する悪霊・鬼・妖怪を呼び寄せてしまうから、②そのむかしに「人買い」がいた頃、夜の人知れず口笛でやりとりをしていたから、つまり、人さらいが来るから、③泥棒たちは口笛でやりとりをしたから、④インドの蛇使いのように、蛇を引き寄せるから、⑤ミミズが口を舐めるから、⑥親を吹き殺すから、もしくは親を早死にさせるから、⑦風を呼ぶから、あるいは海が荒れるから、⑧魔が差すから、など枚挙に暇がない。思えば、お化け屋敷や怪談話の効果音でも、のこぎり音でおなじみの“ヒヨヨ~ン”という演出は欠かせないが、これも暗闇を吹き抜ける風か、口笛のようにも聞こえる不気味な音である。〉(本書より)
 祖母は口笛について、吹いてはいけないという理由をそんなに知っていたとは思えない。いずれにせよ、不吉であることは信じていただろう。私が祖母に教わった夜口笛を吹いてはいけないという理由は、鳥などが眠っているのに、口笛の音で眼をさますからということであった。私の生家は大きな木にかこまれていた。鳥たちがそんな木の中で眠っている。鳥たちは口笛で起こされ、鳥は夜は暗がりでは眼が見えず枝から落っこちるというのであった。実際そんな鳥など見たこともなかった。〈泥棒たちは口笛でやりとりしたから〉とか、もちろん人買いが口笛でやりとりしたなどということは祖母から聞いたことはなかった。〈ミミズが口を舐めるから〉というのはどういうことか、よく意味がわからない。
 そういえば、日活映画といえばアクション物であった。夜のはとばの埠頭の暗がりの中から、口笛の音が聞こえてくる。日活のアクション映画はそんな場面によって成り立っていた。ぶきみさが効果満点であった。あの口笛の吹く音がぶきみなのはどうしてかしら。若い頃、漁師をやっていた時、船の上で口笛など吹かなかった。そんなことしたら年寄り漁師に叱られただろう。その口笛に海の魚たちが寄ってくるということもなかったろう。







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