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評者◆秋竜山
空腹には芸術も通じない?、の巻
No.3372 ・ 2018年10月27日




■ヒトが、うまそうに料理を口にしているのを見ると、「このヤロー」なんて、思うヒトはいないだろう。うらやましいとは、ちょっぴり思うが、そんな感情むき出しになることもない。見ていて悪い感情はわかない。テレビの料理番組がそうだろう。家庭などの料理づくりをしている姿は、いつも背中を見ているのであるが、テレビの場合は、こっちを見て料理をしている。これとて、不思議さも感じさせないのである。これはテレビ番組だからと思わせられるからだろう。料理をつくる人、食べる人がいて、料理というものが成立するものであるが、それを眺めている人がいるというのがテレビ番組である。それも茶の間などに置かれてあるテレビを観ながらである。テレビ番組の不思議さは、どこのチャンネルもまったく同じような番組構成であるが、でき上がるそれぞれの料理がすべて一〇〇パーセント「おいしい」と、いうことになる。
 食べる人の、どー見ても演技としか見えないけど、私だけがそう思えるのかしらないが。特に、お笑い番組などで無理して笑っている、あれに共通しているようでもある。笑いのむずかしさは、ごまかしがきかないだけに、ごまかしの演技にまで到達できるのは相当の演技力を必要とするだろう。料理番組の「おいひー」などというあの、演技などもあてはまるだろう。テレビで観ていると、人気タレントや有名タレントが、食べる姿、それも天下の美女であったりすると、そのままの姿や仕草やマナーなどに品格のようなものがもろに出てしまうから、それをテレビに映し出され茶の間で観られてたのしまれているとなると、下手に食べられないことになってしまう。今の時代、そんなこというと時代遅れとして笑われてしまうかもしれない。かつて、女性が食事するということは恥ずかしいなんていう時代があった(そーでもないか……)。電車の中で、おくめんもなく化粧している女性に似ている。食事する女とか化粧する女とか。かくれてするものであった(なにも、かくすこともないだろうけど)。ピカソに「泣く女」というピカソの代表作の一つにあげてもいいくらいだが、あーまで泣いている女性を真にせまって描けるというのも天才ピカソだからだろう。ピカソ画伯に「食事する女」とか、「化粧する女」とかを描いてもらったら、いったいどのような女になるか見てみたいものである。これこそ、芸術的な女性ということになること間違いないだろう。
 河合隼雄『こころの処方箋』(新潮文庫、本体四六〇円)で、
 〈「絵に描いた餅」という表現がある。そんなことは所詮、絵に描いた餅だ。というように、見かけはともかく、何ら現実的価値を持たないという意味で、この言葉は使われる。確かに、どんな上手に描かれた絵であっても、それは腹の足しにならない。それは確かにそのとおりである。しかし、今ここに、たとえば、東山魁夷画伯の描かれた餅の絵であればどうだろうか。それは本当の餅の値段などとは比較にならぬ高値なものとなるだろう。絵に描いた餅の方が、現物よりはるかに価値をもつのである。〉(本書より)
 その絵に描いた餅を見て、グーグーなりっぱなしの腹の虫は何というか。「その芸術性を大いにかみしめよう」だろうか。もしかすると、よけいグーグーがひどくなるかもしれない。空腹には芸術も通じないものかもしれない。







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