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評者◆伊達政保
なぜこのような青春グラフィティ映画にしてしまったんだろう――新生若松プロダクション映画製作再始動第一弾『止められるか、俺たちを』
No.3372 ・ 2018年10月27日




■新生若松プロダクション映画製作再始動第一弾『止められるか、俺たちを』監督・白石和彌、脚本・井上順一、主演・門脇麦、井浦新。故・若松孝二を敬愛しリスペク卜する晩年の若松プロそして若松組のスタッフ、キャストらが総結集して作り上げた、69~71年の激動の時代、傑作乱発時代の若松プロダクションそのものを描いた作品である。主演の若松プロ助監督吉積めぐみ役には門脇、若松孝二役には井浦。足立正生、秋山道男、小水一男、沖島勲、大和屋竺、荒井晴彦など当時の若松プロのスタッフや、若松プロに関わる松田政男、赤塚不二夫、大島渚などを当時生まれていなかった若い役者たちが演じている。黄金時代若松映画の常連であった吉澤健、若松監督『キャタピラ一』でべルリン国際映画祭など主演女優賞を総嘗めにした寺島しのぶがちょい役で出演し、ATGの葛井欣士郎役を奥田瑛二が演じている。
 映画は1969年3月、秋山に連れられてめぐみが若松プロにやってくるところから始まる。そしてすぐに足立監督『女学生ゲリラ』、若松監督『処女ゲバゲバ』の同時撮影が始まる。足立と若松の撮影方法の違いが再現されていて面白い。しかしこの年の1月東大安田講堂が封鎖解除され一気に学園闘争が拡大、全国大学の三分の二がストライキに突入。4月オイラ中央大学入学、同月連続射殺魔事件永山則夫逮捕。4・28沖縄デー、銀座霞ケ関一帯で騒乱状態。5月には大学立法粉砕闘争、一方新宿西囗では7月にかけてフォークゲリラ集会で騒然。8月足立『略称・連続射殺魔』撮影開始。9月若松『ゆけゆけ二度目の処女』、この映画ではセントラルアパー卜屋上だけの撮影現場が再現されている。10・10明治公園での10、11月闘争総決起集会の実写と再現シーン。そうした中で、ひたすら撮影現場を駆け巡るめぐみ。70年、沖島監督『ニュージャツク&ベティ』。3月赤軍派「よど号」ハイジャック。6月70年安保闘争。9月PFLPの連続ハイジャック。11月足立『噴出祈願 15歳の売春婦』、若松『性賊 セックスジャック』。11月25日三島由紀夫、市谷防衛庁で割腹自殺。それを受けて若松監督、足立脚本『性輪廻〈セクラマグラ〉 死にたい女』撮影。71年若松足立レバノンへ、『赤軍―PFLP世界戦争宣言』撮影。めぐみ死去。そして『赤P』全国上映のための赤バス隊が出発する。
 しかしなぜこのような青春グラフィティ映画にして
しまったんだろう。めぐみの澳悩を描くにしても、当時の若松作品のようなこの時代の緊張感、ヒリヒリ感が全く伝わってこない。若松プロはこんな仲良しグループじゃなかったろうに。オイラにとって当時の彼らは怖かったのだ。また「俺は若松プロの評論家だ」と言い切り、この時代殆どの映評を書き出演もした平岡正明の名が出てこない。なぜ敬遠されたのだろうか。







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