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評者◆増田幸弘
侵攻五〇年の街を歩く――歴史というものはだれかが関心をもち、語り継がなければ、事実さえもねじ曲がり、容易に修正されるかよわいものである
No.3372 ・ 2018年10月27日




■写真家ラディスラフ・ビエリクが一九六八年八月二一日、スロヴァキアの首都ブラチスラヴァにある、コメンスキー大学哲学部校舎の前で撮った一枚の写真が残る。侵攻したワルシャワ条約機構軍の戦車の前で、一人の若い男がシャツをはだけて立ちはだかり、おれを撃てとばかりになにかを叫ぶ写真だ。いまにも泣きだしそうな顔が心を打つ。ビエリクの息子ペトルが革命後、亡くなった父が共産体制下に公表できなかったなにかを残しているはずだと探したところ、くたびれたスーツケースに隠されたフィルムを見つけた。そのときペトルは一六歳だった。
 第二次世界大戦後の一九四八年、クーデターによってチェコスロヴァキアで共産主義政権が樹立する。しかし、社会主義や共産主義とはなにか、実際のところ国も国民もよくわかっていなかった。戦前まできわめて資本主義的な工業国として発展していたからだ。当初、小作農が地主を即席裁判で弾劾するなど、急進的な面が目についた。知識人や聖職者の粛正も相次いだ。ようやく六〇年代になって「人間の顔をした社会主義」と呼ばれるチェコ的な考えがまとまり、「プラハの春」と呼ばれる繁栄を取り戻す。その思いを軍事力で真っ向から否定したのがチェコ侵攻だった。
 侵攻から五〇年経った追悼式典がさる八月二一日午前一〇時、哲...







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