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評者◆ベイベー関根
意味はなくとも面白い!意味がないから面白い!『諸星大二郎 ナンセンスギャグ漫画集・○珍の巻、○妙の巻』(本体各六九〇円、ジャイブ)
No.2967 ・ 2010年05月29日




 はっきりいって、読者の皆さんにはまったく関係ないことだが、この連載は基本的にひとり一回しかとりあげないことにしているので、どの漫画家をどの作品でフィーチュアするかはけっこう重要な問題なのだ。
 そこで難しいのが諸星大二郎である。相手は天才ですからね、どれをススメてもおかしくないわけだけど、これまたはっきりいっちゃうと、近年はけっこう線もヨレてるじゃないですか。そこがまた味といえば味なんだけど、いちおう知らない人が読むのが前提だけに、それが諸星初体験になるんでいいのかとかさ、考えたりするわけよ。
 それでこれかい! といわれるのを覚悟で、今回は『諸星大二郎ナンセンスギャグ漫画集』○珍の巻、○妙の巻をとりあげる。わざわざこれをススメるというのもあんまり誰もやらないじゃないかと思ってさ。
 というわけでこの2冊、タイトルどおりの短くて笑える(?)作品を集めたものだ。といっても、なんせ「ナンセンスギャグ」だからなあ、それこそ諸星大二郎ってこういう人なんだと思われては困るわけだが、それだけの人ではないということも同時にビシビシ伝わってくれることだろう。デビュー直後から最近作まで網羅していることで、絵の違いもさることながらいろんなことを試してる人なんだ、ということも納得してもらえよう。
 中にはくだらな~いものもある。何だよ、ダジャレかよ! とマジメな人なら(「お笑いにはちょっとうるさいんだよね」とかいう人)怒り出すかもしれんものもある。まあムリもない、落語のオチとは違って、ホントに話自体が帰納的に作られてたり、いわゆる「奇妙な味の短篇」をまんまやってるようなのもあるしなあ。とはいえ、作品をじっくり読んでもらえれば、ちゃんと絵が楽しめるようになっていることもわかるはずだ……と思いたい!
 しかし、何といっても今回の刊行で一番価値があるのは、○珍の巻に掲載されてる初期未発表作「無題」だろう。これがホントーに支離滅裂で、しかもどうしようかっちゅうくらい面白い。アパートの狭い廊下を走るバスに乗って殺人犯は立ち去るわ、ちょんまげ結った刑事が部下にあけさせた扉の向こうでは巨人阪神戦が行われているわ、用なしになった容疑者は一刀両断され、次の容疑者のピーター(池畑慎之介ね)はスーパーマンとなって飛んでいく。夢のようでいて夢でなく、明らかに意味を抜き取った笑いが目指されている分、「ねじ式」とかともちょっと違うんで、執筆当時にこれを面白がる人はほとんどいなかったんじゃないかな。
 ともかく、肩の力をぬいて諸星作品が楽しめるという点では、この2冊が群を抜いているのは間違いなしで、これまでなんとなく敷居が高いと感じてた人にもぜひオススメしたい。
 そうだ、もうひとつ自信をもってオススメできるのは、実は定価の安さなんだよな! A5判で、1冊690円。2冊買っても1380円!やっぱ買わない手はないと思うな~。
(セックスシンボル)







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