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評者◆秋竜山
夫婦ゲンカは見物するにかぎる、の巻
No.3355 ・ 2018年06月16日




■家庭の主役は、夫婦である。まわりの家族は、その他大勢ということになる。家庭マンガというジャンルがある。新聞などのマンガといえば、この家庭マンガということになるだろう。日本中、家庭ばかりであるから、どこにでもあるということで一番身近であるからである。新聞マンガといえば、家庭マンガであるということは、一番安易な選択であるだろう。新聞社としても家庭マンガ以上のものを望んでいないからだろうとも思える。新聞社の安心感のようなものであるだろう。それはそれでよいとして、家庭マンガで内容として、何が面白いかというと、もちろん主役の夫婦のありかたであり、そのありかたも、夫婦ゲンカという争いである。夫婦ゲンカというものは、百組の夫婦がいたら百とーりの異なった夫婦ゲンカがあるわけであって、マンガで受けるのは、その夫婦ゲンカを見物することである。ケンカ中の夫婦の中にわって入って「ケンカするのはおやめなさい」という行為ほど無駄なことはなく、バカ馬鹿しい仲裁はないだろう。それは、昔から大きなお世話であるからだ。そして、夫婦ゲンカは犬もくわぬともいう。夫婦ゲンカの中に入るということは土足でふみ込むということでもある。夫婦ゲンカのマンガが、だんトツに面白い。マンガ家のアイデアに困った時の夫婦ゲンカたのみ、というくらいだ。なぜ、夫婦ゲンカというものが面白いかという問いは不必要だろう。実際の夫婦ゲンカを見物してみればすぐ答えが出る。
 境野勝悟『良寛 軽やかな生き方』(三笠書房知的生き方文庫、本体六三〇円)のオビで〈一日一日、また一日。新たな気持ちで生き切る〉と、ある。これを、夫婦というものに置きかえたらどーだろうか。亭主が、いや女房が、であってもいい。どっちかが、「一日一日、また一日。新たな気持ちで生き切ろうではないか」と、いう。どういうことになるかというと。「あんた、なに寝ごとをいってるのよ。バカじゃなかろうか。あんた大丈夫なの」。このような名文句が夫婦間には通じないだろう。そもそも夫婦というものは、二人で新しい道を切り開こうというものではなく、一日一日、また一日、ひたすら毎日惰性の産物というか繰り返しであるということである。よくいう、空気のような存在というものである。だから、時折り、夫婦ゲンカなるものを始めてしまうのである。
 〈人間の是非 看破に飽いたり 超訳する、「大人の世の中は、あれがいい!これがいい!ああしなさい!こうしなさい!あれはダメだ!これもダメだ!と決めつけて、おたがい、他人の欠点を見つけようと、あくせくしている。そんな姿は、もう見飽きてしまった。子供の世界はすばらしい。けっして決めつけないから、本音をぶつけて話しても平和だ。やりたいことだけやって、心から楽しみ、すぐ、怒っても、また、すぐ笑う。」〉(本書より)
 怒りもなく、笑いもなく、一日一日、また一日。もちろん会話もない。そんな毎日をおくっていく。これが理想とする夫婦であり、思い出したように、とっくみあいのケンカをする。そんな場面を見物する。そのどこが面白いのか。無責任の面白さである。女房が亭主の顔を引っかいたりする。それがなにより面白い。







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