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評者◆ベイベー関根
要は亡くなった人の描いたマンガだから?――今敏『OPUS 上・下』(本体各九三三円、徳間書店)、押井守・今敏『セラフィム 2億6661万3336の翼』(本体一一四三円・徳間書店)
No.3009 ・ 2011年04月09日




 今敏が亡くなってからもう半年だなあ。
 こういう連載だから、東日本大震災で亡くなられた方々以外にお悔やみをいうつもりもなかったけど、初監督アニメーション作品『Perfect Blue』をアロノフスキーが参照しているとか、むしろ世界の方で評価が高いことは覚えといた方がいいだろうな。
 もうひとつ、今敏が大友克洋のアシスタントを務めていたり、押井守の原作でマンガを描いていたりと、マンガ家としても面白い道をたどっていたことも。
 もっとも初期の『海帰線』以外は作品をまとまって読める機会もなく、今敏のマンガ家としてのキャリアはほぼ忘れられたままになっていたのだが、追悼出版ちゅうことで『OPUS』『セラフィム』が徳間書店から、『海帰線』新装版と短篇集『夢の化石』が刊行された。そんでも、やっぱり作家としての本領はこっちかなってんで、今回は徳間の2冊を取り上げとこう。
 実をいうと、こういう大友克洋(あるいは板橋しゅうほうとかな)フォロワー丸出しの絵の人ってのは今も昔も正直苦手なんだけど、この人は実際に大友直系なわけだから、もうしょうがない(笑)、ということにこの際しておこう!『OPUS』は、また実に今敏好みのメタフィクションで、マンガ家が自分の作品世界に入り込み、自分の作ったキャラに翻弄されたり陰謀に巻き込まれたりしていくというもの。まあ、いかにもヒネたオタクの人が考えそうな話なんだけど、まあここまで徹底してやれば立派というか、まいりましたという感じだなー。『セラフィム』の方は、これまた実に原作押井守好みのSF仕立てのポリティカル・ハードボイルド。21世紀初頭にユーラシア大陸の深奥部に発生し、またたく間に伝播した謎の病気「天使病」をめぐるひとりの老人とひとりのオジサンとひとりの少女(?)と一匹の犬の物語だが、まあ~正直いって、世界観とかいうものをコテコテ作るのが信条の押井守が原作だから、話がまどろっこしいというか、なかなか始まらないというか、これでおしまいかあというか(苦笑)。
 で、なんでこの2作がこれまで刊行されてなかったかというと、どちらも未完だからなんだよね。特に『セラフィム』の方は続きが読みたかった、ないしは押井守が責任もってアニメ化とかするべきだと思うけどなー。結局どちらの中断も今敏自身の理由によるものではないみたいだけど、これだけリキ入れてやってたものがそれじゃ、さすがに別のことをしてみたくもなるのもムリはないよなあ。『セラフィム』pp.220‐221の会話シーンとか見ると、アングルと表情をちょっとずつ変えただけの週刊連載マンガによくある会話シーンとは確実に違う説得力溢れる演出力を今敏がもっていたことがわかる。それは後にアニメ作品の中に結実するわけだが(キャラの弱さといっしょに)、彼がその後もう一度マンガに戻ってきてたらどんなふうになってたかなあとふと詮ないことを思ったりするわけだった。
(セックスシンボル)







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