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評者◆秋竜山
ハイヒールは何のために、の巻
No.3348 ・ 2018年04月21日




■昔、「足下を気をつけろよ」と、よく親にいわれた。一寸先の見えない田舎の夜道であった。気をつけても土手に落っこちた。「だから気をつけろといったんだ」と、親にいわれた。飯間浩明『小説の言葉尻をとらえてみた』(光文社新書、本体七八〇円)で、
 〈平成十九(二〇〇七)年度の文化庁「国語に関する世論調査」で、『足下をすくわれる』と言うか、『足をすくわれる』と言うかが問われました。約七割の人が「足下をすくわれる」を選びました。べつに意外ではない結果です。ところが、調査を報告した文書には「足をすくわれる」が「本来の言い方」と記されました。国語辞典にも「足下」は「本来は誤り」と記すものがあり、それを踏まえてのことだったでしょう。マスコミはそれを受け、「『足下』の誤」と、報道しました。〉(本書より)
 よく考えてみると、いくら気をつけても土手に落っこちるのも暗い夜道のせいでもなく、あの当時私に気のゆるみがひんぱんにあったというだけのことである。ベルトのゆるみは、ズボンも落ちるも道理である。そして、「足下をすくわれる」のも、すくうほうからすれば「気がゆるんでるから」と、いうことになるだろう。「まさか……」と、思うことが、気のゆるみそのものである。「足下をすくわれる」のも、気が足下にまでまわらないからだろう。すくうものがいるから、すくわれるものがいる。いや、すくわれるものがいるから、すくうものがいる。それが世の中である。
 私にとっての最大の気のゆるみは、電車の中で、私の前に立っていた御婦人に、こともあろうに同時に両足をふんづけられたということであった。普通の靴だったら、たいしたこともないのであるが、その御婦人のバカ高いハイヒールによってであり、もしあの時、あまりの激痛で私が気絶していたら、その日の新聞のニュースになっていただろう。私は死ぬかと思った。靴の上から足の甲を突きぬけて足の裏まで穴が開いていたとしても不思議はなかっただろう。私はその時、思った。ハイヒールは男性の足をふんづけるために存在するのではなかろうか。そして、女性も、心ひそかに、そうなることを期待しているのではなかろうか。ある時、街の歩道で、ハイヒールのかかとの部分を折ってしまった女性を見た時、あの時ふんづけられたハイヒールは、こんなものではない!! と思った。「足下をすくわれない」ように気をつけることも大切である。そして、足をすくわれない!! ようにと正しくいうのも大切だ。そっと、大切なことがある。それは、世の男性諸君におくる言葉として。「ハイヒールで足をふまれないように!!」と、いうことである。自分の足下や足は、自分で守るしかないようだ。話は全然違うかもしれないが、「すくう」という意味で連想してしまうのは、あの「ドジョウすくい」である。そして、ドジョウは「足下」でもなく「足」でもなく、全身、である。







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