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評者◆三島政幸(啓文社コア福山西店)
執念深さと無意味さの頂点
ホリイのずんずん調査 かつて誰も調べなかった100の謎
堀井憲一郎
No.3129 ・ 2013年10月05日




◆文章の書き出しは簡潔に。
 「週刊文春」でかつて連載されていたコラム「ホリイのずんずん調査」から、私が学んだことである。以降、本の感想コメントを求められたり、ブログを書く際、そしてこの原稿においても、書き出しは極力簡潔に、それでいて入り込みやすいように心がけている。
 「ホリイのずんずん調査」は私にとって、コラムの理想のようなものである。読み易く、楽しく、そして、タメになるようでいて本当にタメになっているのかよく分からない。もしかすると読み終えた端からすぐに忘れてしまうような内容だけれど、面白いことだけは強烈に記憶に残る、そんなコラムだ。いや、コラムだった。連載は残念ながら終わっている。
 『かつて誰も調べなかった100の謎』は、そのコラム「ホリイのずんずん調査」のベストセレクション集だ。日常生活において、ふと疑問に思ったことを勝手にずんずん調査していったものだが、その題材、調査結果とも、意味があることもあれば全く意味のないこともあって、でもだからこそ面白いのだ。そもそも調査方法も結構アバウトで、ちゃんとした資料にあたることもあれば、「○人に聞いてみた」というレベルの場合もある。でも調べるときは徹底していて、例えば「郵便ポストの回収は表示時間通りに来るのか」という回では、ある一箇所のポストをずっと観察していて、郵便局員さんが来た時間を秒単位まで記録する、ただそれだけの調査を一週間やっている。ただ待つだけの調査がいかに大変かちょっと想像し難いが、刑事の張り込みに匹敵するものではなかろうか。
 他にも、チョコボールを買って金のエンゼル・銀のエンゼルが出る確率を調べたり、キャッシュカードの暗証番号を何にしているかを千人以上から聞き出したりしている。誰も調べようとは思わなかったことを調べて、出た結果を見ても、だからどうなんだと言われれば特に意味はない、そんな調査が多い。場合によってはアルバイトまで動員して調べた割に、週刊誌1ページ分の原稿料にしかならないのだから、コストパフォーマンスが悪いことこの上ない。なのに、そんなコラムを17年も続けていただけでもすごいと思う。
 とは言っても、中には意義のある調査もあるので、そんな例も紹介しておきたい。「クリスマスは恋人と過ごす」という風習を生み出したのは、1983年の「アンアン」だった、ということを見つけ出したのはこのコラムだ。バレンタインデーのチョコが大流行したきっかけは1977年だった、バブル経済を「バブル」と言い出したのは1990年の「週刊ポスト」だった、という事実もこのコラムが発見した。ホリイさんの執念深さが日本の文化史の証言者となったのだ(ちょっとオーバーかな)。
 本関係のネタでは、「ミステリー本が重くなった」という調査もある。年末に発表される「週刊文春」のミステリーベスト国内10作品の重さを量り、近年のミステリーが重くなる傾向があることを発表した。私たちも何となく「分厚くなってるよな」と思ってはいたものの、厳密に調べたことがないことを調査してくれているのだ。ちなみにこの調査期間(1990年~2000年)で一番重かったのは、島田荘司『アトポス』の920gである。ほぼ一キロだ。本の重量化の背景には、執筆手段の変化があるのではないか、と結んでいる。
 意味のあるようなないような調査を読みながら、コラムの書き方の勉強にもなる最強のコラム「ホリイのずんずん調査」、連載復活を望んでいるのは、私だけではないはずだ。







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