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評者◆添田馨
暗黒の時代から漆黒の世へ⑥――その死を想う
No.3348 ・ 2018年04月21日




■人の死はそれが誰のものであっても、絶対に貶められてはならない。
 3月7日に財務省近畿財務局のノンキャリの職員が自宅で命を絶った。第一報は3月9日だった。それに先立つ3月2日に朝日新聞が国有地売却に関わる公文書改ざんのスクープを打ち、それが国会で大問題に発展していた。そんな矢先の死であった。この職員は、森友学園への国有地値引き交渉に関わる文書の改ざんに深く関わっていたとも言われている。そのことが原因でみずから死を選んだとするなら、あまりに痛ましい。
 あなたをそこまで追い込んだ者たちは、他にいる。原因を作った者たちはいまもどこかで息をしている。あなたはそんな奴等のために、死んではならなかった。絶対に死んではいけなかった。私は見ず知らずのあなたの死を想う。あなたの死はあまりにも理不尽であり、世界が決して許容してはならない類の貧しすぎる死だと思う。あなたの人生は、もっと別の価値あることのために開かれていたはずだ。それを奪った者たちがいる。奴等はいまもどこかで息をしている。
 あなたの死が報じられて、この国の灰色にくすんだ空気は一変した。気づいた者は多くなくとも、間違いなく変わった。死に際してあなたは幾ばくかの言葉を残したとも聞く。しかしそれは未確認のままだ。それよりも私は、あなたの死の事実そのものこそが、絶対零度の非情さを宿した“言葉”だったのではないかといま思う。現にこの国の多くの人が、沈黙の声としてそれが語るところを聞いたはずだ。あなたの死は間違いなく、この世界のある部分を凍りつかせた。とりわけ、その原因をつくった悪党どもの心臓は凍りついたに違いない。なぜなら、その死の事実はそれだけで隠された多くの不正を暗に糾弾していたからだ。
 あなたの死をそうして貶めた者たちが誰なのか、本当の悪党どもが誰なのか。残った私たちが明らかにできなければ、死は普遍化したまま漆黒で世界を隅々まで覆い続けるだろう。
(つづく)







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