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評者◆ベイベー関根
おばあさんといっしょ。
大家さんと僕
矢部太郎
No.3339 ・ 2018年02月17日




■2017年は、この連載的には夏~秋にもうひとつピリッと来なかったけど、いやー、年の暮れに近づいてきたら、次々来たなー。
 今回取り上げるのも、すでにあちこちからいい評判がずいぶん聞こえてくるんで、遅れをとったかなーという気はするにせよ、まあよいものはよい、ということにしておこう、矢部太郎『大家さんと僕』だ! 内容をひとことでいうと、あんまり売れない芸人(カラテカ)をやってる矢部が2階を間借りしている家の大家さんとの日々を描いたエッセイマンガですな。
 仕事で無茶をしたおかげで部屋の更新を断られてしまった矢部が不動産屋に紹介されたのは、新宿のはずれにある一軒家。1階には高齢の大家さんがお住まいだという(連載開始時86歳)。ちょっとビクビクしながら挨拶に行くと、すごく小柄で上品なおばあさんが、「ごきげんよう」と出迎えてくれる。「ごきげんよう」!?
 大家さんは、干しっぱなしにしていた服を勝手に取り込んでくれたりもするのだが、さすがに最初はちょっとその距離感がつかめない。しかし、おすそわけをいただいたり、ごはんを一緒に食べたりするうちに、昔の新宿の話や恋愛事情、あるいは矢部とはまったく違う暮らしぶりの話に興味を惹かれるようになってゆく。大家さんの方も、矢部のことがお気に入りのようで、このふたり暮らしに生きがいを感じ始めているようだ。矢部に彼女ができかけたり(でもできない)、ふたりで鹿児島に旅行に出かけたり、と楽しい日々が続くが、あるとき矢部が地方公演に行っているときに、大家さんが病気で倒れたという知らせが……!
 作者の矢部は、マンガを描くのは初めてということで、絵は見てのとおりなんだけど、やっぱりこの上品すぎて世間とちょっとズレた大家さんの描き方が素晴らしいよね。とにかく可愛らしい! ウチにもひとり欲しい!
 まあ、各回ごとのオトし方はね、芸人さんだからうまくて当然という感じもするんだけど、微妙な感情とか余情の出し方とか、ホントに並々ならぬうまさで、これは舌を巻いたなー。
 それよりびっくりしたのは、全体の構成力ね、これが見事のひとこと。いきあたりばったりに描くんで
は、絶対こうならねーよな。これ、もしかして連載前から全部作り込んでたんじゃないの!?
 しばらく前に、おざわゆき『傘寿まり子』を取り上げたけど、こういう高齢者をメインにもってくるっていうのはまだ可能性がある気がするなあ。眠ってる記憶や経験、いっぱいあるだろうし。しかし、それを掘り返して面白い世代も、いつまでも生きてるわけじゃないからな!
 ところで、「ごきげんよう」ってご挨拶する人はホントにいて、東京で最初に入った会社でそういう人に遭遇したときは「さすが東京!」と思ったなー。「お召し物」とかふつうにいうんだぜ。おばあさんじゃなかったのがまた驚き(笑)。







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