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評者◆秋竜山
「今何時?」「そーね……」、の巻
No.3359 ・ 2018年07月14日




■先週に続いて、一校舎比較文化研究会編『自分の心をみつける ゲーテの言葉』(ナガオカ文庫、本体四八六円)。またもや、本書からの引用。
 〈私は自由な土地で、自由な人々とともに生きたい。そういう瞬間に向かって私は「止まれ、お前はあまりにも美しい」と呼びかけたい。〉(本書より)
 と、いう言葉。つまり、
 〈瞬間よ、止まれ〉(本書より)
 と、いう叫びでもある。
 〈「ファウスト」第二部第五幕より――「ファウスト」第一部「書斎」の場でファウストは、自分がある瞬間に向かって「止まれ、お前はあまりにも美しい」と言ったら自分は死に、その魂は悪魔メフィストフェレスのものになるという約束をしていた。右がその約束の言葉なのだが、ファウストがそのように言って倒れると、天使たちが空から舞い降り、彼を天上へ連れて行った。〉(本書より)
 瞬間に向かって、「瞬間よ、止まれ」。有名な場面である。この、言葉一つで歴史に残るものとなる。そう思うと、自分の人生の中で、一つぐらい後世に残るような名文句を考えてみたいものであるが、まず凡人には不可能だろう。天才にだって、できるものではない。よく「時間よ、止まれ」だなんて、名文句もある。絶対に止まらない時間に向かって、「止まれ!!」だなんて無謀である。そして、よく例にとっていわれるのは、「時計よ、止まれ!!」ではないということだ。時間と時計は違うことはあたりまえのことである。しかし動いている時間や時計に対して、「止まれ」と、命令する。時間は無理かもしれないが、時計はどーか。茶の間の柱時計に「時計よ、止まれ」と叫んだとして、これも無理な相談である。コチコチコチと、時計の針は動きを止めないだろう。しかし、何かの拍子で止まることも考えられる。「ピタッ!!」と、止まった。叫びが通じたのか。グーゼンの故障かもしれない。時計は止められても、時間は止められない。時間が止まったという映画を観たような気もする。時間が止められている間は、自分では、自覚できないだろう。時間のすすみ過ぎとか、遅れがちの時計の針もあったりする。それは、あくまでも時計の時間であって、時間の流れではない。
 「ねぇ!! 今、何時?」と、時間を聞いて、「きのうの今時分だ」と、答えられたらどーしましょう。腕時計は誰でも腕にはめて持っている。時間を腕にしているということである。ところが、まったく持っていないにひとしいことは、狂った時間の腕時計である。無人島マンガで描いた時計をテーマにしたものの中に、五、六人の無人島の住人が、全員、狂った腕時計で、時間が違っている。そこで、名案として、一人のはめている腕時計の時間を、多数決によって、その時間に決めたのであった。と、いうものであった。
 〈生きている間には、ときに美しい瞬間との出会いというものがあります。そんな中、人情としては「この瞬間がいつまでも続いたら」と願いたくもなります。〉(本書より)
 一瞬という時間がある。その一瞬の時間に気づく場合と、気づかないこともある。人の一生は、一瞬の時間ともいう。その一瞬を見のがしてしまったら……と、考えると。とりもどすことができない。どーしましょう。どーすることもできないだろう。







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