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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3301 ・ 2017年04月29日




■エリック・カール流イソップ童話の世界
▼エリック・カールのイソップものがたり ▼エリック・カール 再話・絵/木坂涼 訳
 『はらぺこあおむし』などで世界的に知られる絵本作家、エリック・カールが、イソップものがたりの童話世界を絵本にしました。この本には「ネコとネズミ」「アリとキリギリス」など11話が収められています。
 たとえば、「アリとキリギリス」のおはなし。夏のあいだじゅう、バイオリンを弾いてたのしくすごしていたキリギリスは、寒い冬がきて、たべるものがありません。夏はどこへ行ってもたべるものがあったので、冬のたくわえをしておかなかったのです。それにたいしてアリたちは、夏のあいだじゅう働いて、たべるものを家のなかに運んでおいたおかげで、たくわえがじゅうぶんありました。
 キリギリスはたべものをもとめて、家々をまわりますが、どの家も親切にはしてくれません。夜も深まり、寒さもどんどんきびしくなっていきます。そうしてさいごの一軒、アリの家のドアをたたいたキリギリスは、「これからパーティがはじまるの。楽器のひける人に来てほしかったのよ!」と、家にむかえられたのです。エリック・カールの絵は、寒い寒い冬の真っ暗な夜、おなかをすかしたキリギリスが、パーティをしているアリの家をたずねる光景を描いています。ここには「今日をたいせつにすることが、明日につながる」という言葉が添えられています。
 この本に収められているのは、どれも有名なイソップ童話ばかりですが、ページをひらいてみると、うつくしい色彩とコラージュで、思いがけない世界が広がるかのようです。そう、エリック・カール流のものがたり世界になっているのです。ページをくるのが楽しみな、新しいイソップものがたりの誕生です。(5月刊、29cm×22cm二四頁・本体一三〇〇円・偕成社)

■猫地獄に落としてやろう
▼笑い猫の5分間怪談⑩――恋する地獄めぐり ▼那須田淳 責任編集・作/okama カバー絵/藤木稟・みうらかれん・緑川聖司・越水利江子・令丈ヒロ子 作
 トンネルをぬけると、そこは地獄だった――。「死ぬも地獄、生きるも地獄なら、猫地獄に落としてやろう」。片思いを成就させようと毎日毎日爪とぎ神社にきてはおみくじをひくアリサ。ある日、いつものようにお参りに行くと、おかしなダンボールのおみくじ箱が置いてあって、その上にでっぷりと太った黒ネコが眠っていた。そこに居合わせた同級生のタクトがおみくじをひくとなんと「超大凶」。そのあとアリサが猫鳴きトンネルのなかを歩いていると、誰かがあとをついてくる。走って逃げてもついてくる。なんと追ってきた大きな笑い猫によって、アリサとタクトは地獄に落とされてしまった!? ふたりは地獄から戻ってこられるのか。さあ、笑い猫の怪談のはじまりはじまり。あっという間に読めてしまう気軽さと、どの巻から読んでも楽しい人気シリーズ「笑い猫の5分間怪談」第10巻の登場です。背筋がぞくっとする笑い猫の怪談はますます絶好調。(3・3刊、B6変型判一七六頁・本体六〇〇円・KADOKAWA アスキー・メディアワークス)

■赤いボールと空中遊泳したよ
▼ぼーるとぼくとくも ▼加藤休ミ 作
 「こんなに大きなぼーるをみつけちゃった」と、おとこのこはおおよころび。赤い大きなぼーるをもって、おかあさんの自転車の後部座席にのりこみます。はたけや林がひろがる、高台のまちをぬけて、おかあさんは自転車をこいで、坂道をいきよいよくくだっていきました。するとどうでしょう。風のいきおいで、ぼーるがふわり! おかあさんは気づかないまま、走り去っていきました。ぼくはぼーるにつかまって、空にうかんだのです。このふわりととぶ瞬間の絵をみていると、読者もいっしょにとんでしまうような感じがしてなりません。そうして、ぼーるとの空飛ぶ冒険がはじまります。
 「くもと あそんでいこう」とぼーるはいいます。赤いぼーるは、うさぎ型のくもの赤い目になったり、ショートケーキのイチゴになったり、真っ白なくもとコラボで、いろんなものに早変わり。グローブ、梅干しのおにぎり、赤信号……。あそびはどんどんひろがっていきます。そして木琴のバチになったぼーるを、象になったくもが思いきりたたいて、とんでいきました。ぼーるはみるみる小さくなり、ぼくはおかあさんの自転車の後部座席にみごと着陸! 夢のような空中遊泳を、まるで読者も空飛ぶように味わわせてくれる絵本です。(2月刊、26cm×21cm三二頁・本体一四〇〇円・風濤社)

■きょうりゅうは仲直りできるかな?
▼きょうりゅうたちがけんかした ▼ジェイン・ヨーレン 文/マーク・ティーグ 絵/なかがわ ちひろ 訳
 きょうりゅうが好きになりそうな魅力あふれるジェイン・ヨーレンさんの文章と、大迫力だけどどこかかわいいきょうりゅうを描くマーク・ティーグさんの絵からなる「きょうりゅう」シリーズに、新たな一冊が加わりました。こんどのお話は、けんかをしたきょうりゅうです。
 ナストケラトプスとアクロカントサウルスが、部屋のなかでおおげんかをはじめました。プールではリトロナクスとヒラエオサウルスがにらみ合い、一触即発です。レプトケラトプスは黒板に、「ディロングはバカ」と悪口を書きました。トルボサウルスは自転車をけとばし、生卵をドアにぶつけているではありませんか。いったいこの先どうなるのでしょう。
 きょうりゅうの仲直りもいろいろです。「ごめんね」と書いた手紙を渡したり、「ドラゴンくん。けんかなんて やめようよ」と人形にお芝居で言わせたり。けんかから仲直りまでを描いた、迫力満点、優しさ満点の絵本です。(3・1刊、31cm×23cm三二頁・本体一四〇〇円・小峰書店)


■広島の街を見つめるドームと化学式
▼ドームがたり ▼アーサー・ビナード 作/スズキコージ 画
 詩人・翻訳家として幅広く活動するアーサー・ビナードさんと、絵本や画集、舞台美術、壁画、ライブペインティングと多方面で活躍するスズキコージさんが、広島の原爆ドームを絵本にしました。戦争から平和のシンボルへ――ドームがくぐってきた歴史が、ふたりの力でこんなに深く大きな物語になりました。
 広島の人たちは、原爆ドームのことをただ「ドーム」というそうです。もとはといえば、広島県物産陳列館でした。チェコ人の建築家ヤン・レツルが設計し、一九一五年にできあがりましたが、一九四五年八月六日、アメリカ軍の飛行機が広島に原爆を落とし、ドームも被爆しました。「広島さんは、ころされた」と本にあります。一面の焼け野原になった広島で、ドームは頭が溶けてスカスカの骨になり、まるで墓標のように立って、街をみつめています。
 この本の終わりに、アーサー・ビナードさんが「ドームの目で世界を見つめると」という一文を書いています。そこに、広島市高等女学校原爆慰霊碑の話が出てきます。ドーム近くの元安川のほとりにたつ碑で、御影石の表面には三人の少女が浮き彫りにされています。真ん中の一人が長方形の箱を抱えていて、そこにアインシュタインの相対性理論の公式、すなわち原子の核分裂から出るエネルギーを示した図式が刻まれているのです。
 原爆で死んだ生徒たちの遺族が碑を建てたのは一九四八年。占領軍のプレスコードが布かれ、原爆の表現は禁じられました。原爆や核兵器という文字を刻むことが許されなかったために、遺族は化学式を刻んだのです。そこには「広島と長崎のそれぞれの核分裂の連鎖反応が含まれる。チェルノブイリ原発と福島第一原発とマーシャル諸島もすっぱり入っている」とビナードさんはいいます。
 ドームにも人類や生物すべての生命が化学式のように刻まれていると、この本の絵は伝えています。多くの読者に手にとってほしい絵本です。(3・20刊、A4変型判三四頁・本体一六〇〇円・玉川大学出版部)


■〈夢〉という名の種をまく詩集
▼たんぽぽの日 ▼尾崎昭代 詩/中辻アヤ子 絵
 ひとりでも多くの子供達に詩が届いたら、どんなに嬉しいことでしょう――。尾崎昭代さんは「あとがき」にそう書いています。この詩集は、子どもたちのために編まれたものです。
 「むかしのこと/〈夢〉という名前の種をまきました/わたしのちいさな心の庭にまきました」
 この詩句に、本書全体への思いが込められている気がします。子どもたちのために、〈夢〉という言葉の種をまいた詩集です。(3・3刊、A5判一〇二頁・本体一六〇〇円・銀の鈴社)






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