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評者◆秋竜山
奥様は魔女、の巻
No.3316 ・ 2017年08月19日




■山北篤監修『なぜ、魔法使いは箒で空を飛ぶのか――「魔法の世界」の不思議を楽しむ本』(本体七八〇円、青春文庫)を読む。「そこに、箒があったからだ」と、答えたとする。「そこに、山があったからだ」よりも、まともな答えである。この答えは正しいからである。登山家よりも魔法使いのほうがふざけていないだろう。魔法使いが空を飛ぶことをおもいたった時、そこに箒があった。魔法使いはその箒にまたがって空を飛んだ。私の推理だと、箒にのれば空を飛べるということを知っていたわけではなく、箒でなくても、なんでもよかったのである。なにでなくても身一つで空を飛べたのだ。ところが箒にまたがった。かくして、箒で空を飛ぶことが有名になった。
 〈魔女も始めから箒に乗っていたわけではなく、一六世紀初頭のドイツでは、魔女は熊手、ただの棒、シャベル、また動物の形をした魔物に乗っていた、という記録も残っている。〉(本書より)
 ようするに、そこにたまたま肩たたきがあったら、それにまたがってもよかったのであろう。ところが、箒にのる姿が評判になり、箒と決めたのだろう。箒も、あの形をした箒でよかったのであった。日本の座敷箒のようなものであったら、カッポウ着姿の主婦魔女が似あうだろう。
 〈魔法使いは箒で空を飛ぶ。中世の頃からヨーロッパ各国で伝えられている「ワルプルギスの夜」と呼ばれる魔女たちの祝宴では、大勢の魔女が箒にまたがり、煙突から飛び出して夜空を駆け、あちら側の世界から這い出してきた死者と魔物と共に夜闇を跳梁跋扈する、とされ、恐怖の対象となっていた。〉(本書より)
 魔法使いといえば、お婆さんであり、それも魔女と決まっているだろう。魔法使いのお爺さんが箒にのって空を飛ぶということを想像しにくいし、サンタさんが空を飛んでいるようでもあり、絵にならない。
 〈なぜわざわざ「箒」を使ったのだろう? これはまず、魔女の伝説に由来している。昔、市井の人々にとって、魔法を使う一番身近な存在は、魔女だと思われていた。そして数ある生活道具の中から、箒が選ばれた理由は何か? というと、その疑問に応えてくれる説はいくつかある。ひとつは、箒は「全ての女性が使っているものだったから」というものだ。当時はどこの家でも箒を入り口の戸に立てていたり、煙突に突き通したりしておく、というのがならわしであったという。つまり、箒というのは、女性の象徴であり、最も身近で親しみのある生活道具だったのだ。〉(本書より)
 魔女のトレードマークとして、あのとんがり帽子ということになっているだろう。私などは、とんがり帽子といえば、子供の頃、昭和二十年代後半に全国的に大流行したラジオ放送から流れてくる歌があった。たしか〓緑の丘の赤い屋根とんがり帽子の時計台鐘が鳴りますキンコンカンメイメイ子山羊も鳴いてます……と続く歌であった。その当時、魔女のとんがり帽子など知らなかった。知らなくてよかった。もし知っていたら、この歌も別のものとなっていたかもしれない。






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