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評者◆秋竜山
(ごもっともです。)、の巻
No.3173 ・ 2014年09月06日




■文章に丸括弧がはいると、とたんにたのしいものになる。勢古浩爾『結論で読む人生論』(草思社文庫、本体六八〇円)を読みながら、そんな箇所に出会った。クスクス笑う。
 〈「死の用意」とは、あくまでも心構えのことである。そして、それがいいのだ。「母なる自然の尊い教え」として、かれはつぎのように矢継ぎ早に連発している。丸括弧内は、わたしの寸感である。〉(本書より)
 この丸括弧内に注目。丸括弧内とは、マンガでいう、口から出た言葉としての吹き出し、と、心の中から出た言葉、声にはならない言葉、相手にはわからない自分だけの言葉ということになる。
 〈死は避けられないものである以上、いつ来ようとかまわないではないか」(かまわぬ、というのではないのだが)。「あらゆる苦しみから解放されたところへ移ろうというのに、それを悲しむとは何と愚かなことだろう」(愚かではない)。「これから百年後に生きていなかったことを嘆くのと同じくばかげている」(さすがにうまいことをいう)。「長く生きることも短く生きることも死んでしまえばまったく同じことだ。なぜなら、長いとか短いとかいうことは、もはや存在しないものにはないからである」(そのとおりかもしれない)〉(本書より)
 一冊の本全編通してすべて丸括弧入りとしたらどうだろうか。作者のもう一人の自分が丸括弧内にいて、なんだかわけのわからない本になってしまうかもしれない。
 〈五木寛之氏はこういっている。――人生に目的はあるのか。私は、ないと思う。何十年も考えつづけてきた末に、そう思うようになった。人生に決められた目的などというものはない。人間は人生の目的をもたなくても、生きてゆくことはできる。(略)「それを言っちゃ、おしめえだぜ」という声がきこえそうだが、人生に万人共通の目的などというものはない。――「人生の目的」幻冬舎文庫〉(本書より)
 この文章に自分の丸括弧を入れるとしたら、どこへどのような寸感が。(ごもっともです。)ばかりの同じ丸括弧になってしまって、ちっとも面白くなかったりして。
 〈井伏鱒二「厄除け詩集」(講談社文芸文庫)に人口に膾炙した有名な詩がある。なんとなく人生の物哀しさを感じるひとの心に訴えたのだろう。暗誦するには調子もいい。ちょっとばかし、人生の深遠を知った気にもなれる。後半だけ引用する。
コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ〉(本書より)
 よく古本など買って読むと、その読書の寸感として丸括弧がビッシリ書かれてあったりする。それを読むのが盗み読みのような気がして、もーしわけなく思ったりもする。だからといって、まったく読まないわけにもいかないだろう。読者が男であるか女であるかもわかってくるし、年齢までもわかる。読むと、やっぱり面白い。しかし、よく考えてみると、後味がよくないものだ。読んで読まぬふりをするのが一番だろう。そして、自分も丸括弧をつけたりして、これには自分も驚く始末だ。







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