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評者◆ベイベー関根
ヤ、ヤバすぎる! だが、この人々から目をそらすな!
漫画ルポ 中年童貞
中村淳彦×桜壱バーゲン
No.3284 ・ 2016年12月24日




■あら? この連載では、桜壱バーゲンさんの作品はメインで取り上げてなかったのか。カフカの『変身』を超下品に(しかし意外に忠実に)マンガ化したときも、わりとあっさり通り過ぎてたんだな。
 ラッキー! 『漫画ルポ 中年童貞』を取り上げられるじゃん! まあ、ちょっと見てよ、このギトギトの絵。ドン底にいる人たちを描かせれば、今この人の右に出るものはいまい。
 この人、北見けんいちのアシスタントをしてたんだけどさ、『釣りバカ日誌』の(「え~!?」)。その後けっこう苦労してて、詳しいことは省略するけど、そのせいもあってか、性風俗ルポ漫画とかも、実にマジメに手を抜かずに描いておられる。2013~15年には、櫻井稔文名義で『絶望の犯島』を『漫画アクション』に連載。しょうもな~と思いながらも、つい感動してしまうサバイバル漫画だ!
 で、この『漫画ルポ 中年童貞』は、中村淳彦の同名新書を原作に、桜壱バーゲンが絵をつけたもの。いや、これがスゴいんだ。本書に登場するのは、無知無教養あるいは高学歴ながらコミュ障をこじらせ、世界や他人がうまく受け入れられずにいい歳になってしまった童貞たち。
 最初に登場する坂口明(仮名)は、44歳の介護職員。誰でも取れるヘルパー2級の資格を持っていることを鼻にかけ、仕事がまったくできないくせに、わがまま放題ゴネ放題、まったく融通もきかない上に、後輩にはセクハラ・パワハラ三昧という最低ぶり。こんな奴、本当にいるのかよと思いきや、「*この漫画に登場する人物はすべて実在する人間です」という但し書きが毎回ついているのには爆笑&戦慄。この他にも、呆れ果てた童貞モンスターどもが次々登場する。
 絵師桜壱の描写力はものすごく、ダメ人間を気取って人目を引きたい程度の青二才には、とてもこのリアリティは出せないね。これ読んだら絶対みんな、「この人、『いる』!」って思うから。この世の陽に当たらない部分を知ってるからこそ描ける人物像だよな。
 原作の中村氏がコラムで、ほとんどの人物の写真を渡してもいないのに、「とにかく描かれる中年童貞が本人に似すぎていること、彼らの行動の詳細があまりにリアルなことに心から驚いた」ってのには、またしても爆笑&戦慄。
 本書を読んでわかるのは、とにかく今や「何コレ、ヤッバ~い、アハハ♡」ではすまされない事態になっているということだ。おおむねの童貞くんが母子関係に問題を持ち、一方でロマンティック・ラヴ・イデオロギーに毒され、まったく希望をもてないか、それを実現する手段をもたない。要するに、人生に絶望しか見出せない人間が大量に産み出され、ほっぽっておかれているということだ。ある中年童貞自身に言わせると、「中年童貞は隔離するしかない」。く~。しかし、これはもうホントに社会がなんとかしなきゃいけない問題だわなあ……。







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