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評者◆稲賀繁美
中国の松本清張ブームに日中文化交流の将来を探る――王成教授講演「越境する「大衆文学」の力:なぜ中国で松本清張が流行るのか」から(下)
No.3214 ・ 2015年07月11日




■(承前)そのなかで『球形の荒野』(1962)翻訳史は注目に値する。終戦秘密工作に従事した外交官の数奇な運命を縦糸とする物語は、まず『重重迷霧』(1987)との題名で中国語訳されるが、2011年には『一個背叛日本的日本人』と題名を改めて出版される。「日本を裏切った日本人」という反日の時局向きの表紙には、日本刀を突き通されて血を流す日の丸が描かれている。加瀬俊一によれば、野上顕一郎のモデルはベルン駐在武官・藤村義一(戦後、義朗と改名)らしいが、加瀬はまた清張の設定は歴史的には無理だ、とも釘を刺している。読者もご承知のとおり、この作品には「世界文化会館」なる施設が登場するが、これは他ならぬ六本木の国際文化会館I‐House。その創設者、松本重治は『上海時代』で著名な「同盟通信社」出身のジャーナリスト。松本を補佐した前田陽一は第二次大戦中、パリに留まり外務省業務に従事した学究でもあった。会館の理事・瀧良精には、按ずるにこの二人の影が宿っているようだ。題名の「球形」に目立つ注記はない。だが全球global時代を見越す清張の先見の明は明らかだ。
 原作から半世紀の時間差を生かしつつ、当代中国の松鷹の『杏焼紅』(2008)は「清張に匹敵する社会推理小説」との売り文句を掲げ、蔡駿は『生死河』(2013)を清張に捧げている。







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