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評者◆添田馨
絶対的に笑えぬ漫画だ――薄汚れた国(5)
No.3182 ・ 2014年11月15日




■第二次安倍政権とは何か。歴史的に見てもこれはかつてないほど危険でグロテスクな性格の政権だと思う。それは連立をも含めた歴代の自民党=保守政権とどこがどう違うのか。
 一言でいうなら、むき出しになった政治的欲望の露出度合が、過去の政権とは異次元的な規模で甚だしいということだ。どういうことか。
 わが国の戦後の保守本流の基層に封じられてきた政策欲求、例えばそれは「自主憲法」制定だったり再軍備とその拡張だったり愛国教育の導入だったり様々であるが、それらが現政権のもとでは純粋培養のように原理化されて、法案化にむけた現実の政治日程に臆面もなく、それも短期間のうちに矢継ぎ早にディスプレイされたことにある。このスピード感には、どう見ても衆参両院で過半数を保っている今のうちにとの算段的思惑が透けており、その手管はさしずめ“政治の相場師的”あるいは“火事場の泥棒的”と形容するのが最も相応しい卑小な動機に発している。
 なぜこうした事態が、第二次安倍政権においては特徴的に招来されているのか。「安倍さんがやりたいと言っているから仕方ない」――集団的自衛権行使容認の閣議決定にむけた今年6月の与党間協議に際し、ある公明党幹部がぼやいたこんな述懐が全てを物語っているだろう。要するに国民の大多数が賛同できるような合理的根拠などないにもかかわらず、憲法の解釈改憲や原発再稼働、特定秘密保護法案、武器輸出解禁、集団的自衛権行使容認といった、ほとんど漫画としか思えないような政策メニューの数々を陳列して、千載一遇のこの機会にそれを現実化しようとしている。これらはすべて安倍晋三という一人の男の脳内に宿った完全に自己満足の漫画的な構想に起因している。だがこれは、この国の歴史もそこで営々と積み上げられてきた価値観さえもすべて自壊させる類の、烏滸の沙汰ともいうべき絶対的に笑えぬ漫画なのだ。
(続く)







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