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評者◆伊達政保
東日本大震災以後の長州藩閥、安倍政権に対しまつろわぬ民が声を上げる時が来た――「上々颱風」の歌姫の一人、白崎映美作詞作曲による「まづろわぬ民」
No.3182 ・ 2014年11月15日




■現在活動休止中のバンド「上々颱風」の二人の歌姫の一人、白崎映美の歌う自身の作詞作曲による「まづろわぬ民」、この歌の「抑え切れないこの衝動は確かにあなた方の末裔だ」「オラ方の先祖はまづろわぬ民だ」というフレーズを初めて聞いた時、思わず鳥肌が立ち、何かが体の中にゾクゾクと湧き上がってきた。
 東日本大震災と原発事故で被災した東北。山形酒田出身の白崎映美は、かつて自らも酒田大火の被災者であった経験もあって、自分に何ができるかと悶々としながらも、被災地を友人のバイオリニスト向島ゆり子らと共に訪問し歌う活動を続けてきた。その中で雑誌「すばる」2011年12月号に掲載された木村友祐の小説『イサの氾濫』に出会う。震災後に思い起こす、荒くれ者の叔父の姿、そこに古代から現代に至るまで、まつろわぬ人として虐げられてきた東北の民の姿を見、現在の被災者と重ね合わせて、まつろわぬ民として叫んでもいいのではないかとするこの物語は、白崎映美に火を付けたのだ。オイラも両親は会津出身、仙台を中心に盛岡、秋田、いわきなどを転々とした東北人、戊辰戦争と東北の怨念は未だ身に受け継がれている。この小説には、現代における東北の独立闘争と敗北を描いた西村寿行著『蒼茫の大地、滅ぶ』と同様に、涙せざるを得なかった。
 以後、白崎は「まづろわぬ民」を作詞作曲、山形のナマハゲとも言える「アマハゲ」の真っ赤な襤褸を身に纏い、憑かれたようにライブ活動を展開していく。昨年には「とうほぐまつり」として仙台出身の梅津和時(サックス)、郡山出身の小峰公子(アコーディオン・ボーカル)、酒田出身の岡田修(津軽三味線)等、多くのミュージシャンばかりでなく、上々時代からの付き合いである西馬内盆踊り一行と一緒にコンサートを開催。なんと、彼らを母体として「とうほぐまつりオールスターズ」を結成。
 今年に入り、演劇関係の友人達の協力を得て「東北6県ろーる!ショー!!」と銘打ってライブを展開、鬼剣舞は出るわ、鹿踊りは出るわ、東北の巨大な神様が出現するわで、ついにはレコーディングを行いCDを発売した。上々での自分の持ち歌や、被災地で歌った「丘を越えて」などと共に作者自身による「イサの氾濫」の朗読が収録されている。先日のレコ発記念ライブは、東北の東北による東北のための集会とも言える素晴らしいものとなった。そして10月には劇団「風煉ダンス」がその歌に触発されて制作した『まつろわぬ民』の公演が行われる。もちろん主演は白崎映美だ。
 東日本大震災以後の長州藩閥政権とも言える安倍内閣に対し、まつろわぬ民が声を上げる時が来たのだ。







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