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評者◆伊達政保
現実を批判しそれを喰い破る「毒」――映画『地球防衛未亡人』(河崎実監督・主演壇蜜)
No.3145 ・ 2014年02月08日




■3・11東日本大震災、福島第1原発事故から3年近く経とうとしている。これまで数多くのドキュメンタリー映画、幾つかの劇映画が作られてきた。オイラそれらの全てを見たわけではないが、何かが違うような気がするのだ。それらの作品の現実に対する真摯な対応は疑うべくもないが、対象に寄り添ったり、現状を明らかにしたり、今後の課題を提出したりするだけではなかったのか。確かに今回の災害とその後に続く被害の余りの過酷さに、そこに立ち尽くさざるを得ないという表現者の心情も分からぬわけではない。しかし、ドキュメンタリーや映画はそこに止まってはならないのだ。現実を批判しそれを喰い破る「毒」がなければ、結局はただの現在にしかすぎない。見よ、安倍自民党政権は大震災を梃子に秘密保護法、原発推進、尖閣問題、オスプレイ、沖縄基地、TPP、東京オリンピック、首相の靖国参拝と着々と手を打ち、憲法改正を射程に日本を思う方向へ導こうとしているのだ。
 この2月に公開される映画『地球防衛未亡人』(河崎実監督・主演壇蜜)は、筒井康隆原作『日本以外全部沈没』の河崎監督が、森次晃嗣(「ウルトラセブン」のモロボシ・ダン)など往年の「ウルトラ」シリーズのキャストを使って、それらの課題に「毒」を振りまくパロディSF怪獣特撮映画である。原発問題をメインに据えたこのギャグ映画が作られるためには、原発事故から2年以上経たなければならなかったのだ。ネタバレになるので詳細は略すが、宇宙怪獣が三角諸島に飛来し、日中が手を出せないうちに怪獣は原発に出現、地球防衛軍が出撃(婚約者を怪獣に殺されたダン隊員に壇蜜)、怪獣は使用済み核燃料を食べ始める。それを利用しようとアメリカ大統領が日本の総理大臣を後押し(キャストが笑える)、世界の核廃棄物問題が解決するかに見えるが、後は見てのお楽しみ。ただ「毒」がばらまかれ過ぎて薄まってしまったのか、本当の怖さでは星新一のショート・ショート「おーい でてこい」に及ばないのが残念。
 昨年秋、原発被災難民の「毒」を表現した8分余りの動画がネット上にアップされた。You Tubeからは性的表現の規定で削除されたという。オイラ本当の理由はこの「毒」にあるのだと思う。『原発熟女おもらし汚染水』。現在でも検索すれば見ることが出来る。前半は素人出演のAV動画によくあるパターン、突然熟女がカメラを回すディレクターを殴り殺し金を奪い、渋る娘に電話する。放射能汚染地域から避難し、生き延びるため西へ向かうことが会話から浮かび上がる。まさに「あらゆる犯罪は革命的である」。監督・脚本は水上清資。これまた必見。







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