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評者◆秋竜山
わかったような話、の巻
No.3144 ・ 2014年02月01日




■大栗博司『大栗先生の超弦理論入門――九次元世界にあった究極の理論』(講談社・本体九八〇円)を読む。読めば読むほどに、わからなくなっていく。わからないけど面白い。一見わかったような気分にさせてくれるのが日本語のよさである。なぜ、読むのか。面白いからである。毎日、新聞を開く。今さらあわててどーする。なれっこの強さというべきか。その日の新聞に目をおとす。たとえば、五〇〇億円という金額が紙面におどっている。いったいどれ程のお金であるか、わかったような気で読んでいるが、わかったということは、わからないということだ。政治面もわかったような気で読みすすめる。つまり、気で読むということだ。わかった!!わかった!!と脳天気に読みすすめていかなくては。これが、わからない!!わからない!!で読んでいくと、なにがなんだかわからなくなってしまって次にすすめられない。政治面などもそーである。一応はわかった!!と、いうことで読むのが新聞というものだろう。紙面の活字が大きくなったという。これで、お年寄りも読みやすくなっただろう!!なんて、いっているようだけど。たしかに、読みやすくなったであろう。しかし、読んでわかりやすい記事になったのではないということだ。読者はそれを一番期待しているのだけどねえ。何十年も前の古新聞が押し入れの中から出てくる。こんな小さな活字を昔の人は読んでいたのか。
 〈「空間は幻想である」という重力のホログラフィー原理は、ブラックホールについての研究から明らかになりました。ブラックホールの謎を解決するためには、「空間とは何か」を深く考える必要があったからです。しかし、これまでの超弦理論の研究からは、空間と同じように時間が現れたり消えたりする例は見つかっていません。「空間とは何か」の理解にブラックホールの研究が役に立つのなら、「時間とは何か」を理解するためには、何を研究すればよいのでしょうか。私は、それは「宇宙の始まり」だと思っています〉(本書より)
 この文章もこれ以上わかりやすくはならない程にでき上がったものだと思う。しかし、残念ながら、一つ一つ理解しようとすると、まずもってわからない。新聞の政治面を見せつけられているようにさえ思えてくる。わかったつもりが、実は、まったくわかっていなかったりするものだ。だから、いちいち気にもしないで読みすすめることである。
 〈宇宙はどのようにして始まったのか、というのは本書の最初に掲げた疑問の一つですが、これは「時間の始まり」についての問いでもあります。宇宙に始まりがあったとすると、それ「以前」には時間もなかったことになります。では、宇宙はどのようにして生まれたのでしょうか。〉(本書より)
 このようにして読みすすめていくと、わかったような気がしてくるのである。新聞にのっている天文学的数字の金額も、ならされると頭の中に見えてくるから不思議だ。一兆円という金額もちっとも驚かなくなってしまう。驚いていては先にすすめないだろう。
 〈未知の世界を探求する人々は、地図を持たない旅人である。(湯川秀樹、自伝「旅人」角川ソフィア文庫)〉(本書より) というではないか。







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