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文学
無関心の罪悪
書籍・作品名 : 六号室
著者・制作者名 : チェーホフ  
いなり寿司   58才   男性   





チェーホフ「六号室」を読みました。戯曲ではなく、短編の散文です。
とても複雑な気持ちです。田舎町に建つ古くてさびれた病院の精神科病棟にまつわるエピソードについて書かれています。正気と狂気が次第に対立するものからそうでないものに転換し、その境目が読むにしたがって曖昧になってゆきます。それは皮肉でもありますが、都合の悪い者を排除する仕組みの話でもあり、それを内的に取り込んでしまう人間の不条理の表現でもあります。その中でも最大の狂気が「無関心の罪悪」である、と作者は言いたいように感じました。自らの殻に籠ってひたすら俗事に無関心であろうと努める一人の医師の姿を通して、独特のブラック・ユーモアで彩られた悲劇が描かれています。他人に対する無関心と自己の快楽への耽溺が、本質的に自己欺瞞でしかなく、内向した攻撃性が次第に強化され、自らの心を蝕んで破滅に導く結果となる、という事でしょうか。作者の教養と思索の深さがうかがえる一編。






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