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映画
日本の戦後30年が詰まったアニメ映画
書籍・作品名 : AKIRA
著者・制作者名 : 大友克洋  
ノムさん   22才   男性   





ストーリーは「ネオ東京」が舞台。荒廃状態からここまで立て直した、と大佐が高層ビル群を眺めながら発言するシーン。日本は1945年、原子爆弾がアメリカによって投下された後、ポツダム宣言を受け入れ、降伏した。その時すでに、原爆により広島・長崎は崩壊、また関東大空襲をはじめとする各地の大空襲により日本は焼け野原状態にあった。そこから戦後復興は難航。しかし、1955年朝鮮戦争をきっかけに朝鮮特需がおこり、高度経済成長期へ向かう。この戦争のおかげで日本は一気に復興することができた。作者の大友克洋さんはちょうど、この1年前の1954年に生まれている。

その他にもざっと挙げていくなら、ヘルメットをかぶりゲバ棒を持ってデモをしている人たちが映画の中で、多人数でてくる。これは、これは60年代〜70年代の学生運動だろう。その当時、学生運動が起きていた理由はさまざまあるが、安保闘争への反対、全共闘、大学紛争などなど。これは日本だけでなく世界的にも、特に1968年は社会運動の時代であった。

東京オリンピックの描写が、出てくるのも踏まえ、あの時代を表現していることは間違いない。ちなみに東京オリンピック開催は1964年である。ストーリーの設定は2019年だが、現実的な話、作者が想像していたのは、64年オリンピックだろう。

ここらで’AKIRAくん’について。これは、「原子力」を表象しているのではないかと思う。科学者が全てを包摂したエネルギーみたいなことを言っていたが、まさに原子力こそ、人間が発明した人工的で無限に生み出すことができるエネルギーである。また、最後にAKIRAくんがオリンピック会場でどでかい爆発をしたシーン。原爆が爆発する時の爆発の仕方と同じである。似たような作画に、『風の谷のナウシカ』で巨神兵がビーム?を打って爆発するというものもある。宮崎駿作品の中で、若き頃の庵野秀明が作画したとして有名。これも確か、原爆を表象してるだとか。

それに同時代を生きていた岡本太郎も、その作品で原子力を表現している。その一つが70年万博で作られた「太陽の塔」。太陽の塔の背面には黒い太陽が描かれている。これは人間が作り出した人工的な太陽、すなわち原子力である。

作者の大友さんも、岡本太郎に影響を受けているのではのないだろうか。ケイが、金田にアメーバのことを話しているシーンがあったが、太陽の塔の内部にある「生命の樹」の1番根っこに、アメーバのオブジェが置かれているのだ。岡本自身もアメーバを生命の根源だと捉えていた。

AKIRAくんは、みんなの中にある。
関根光才監督「太陽の塔」で、誰だったかが言っていた。日本は、原子力の影響を1番受けている国なのにそのことを忘れてしまっているのではないかと。広島、長崎に落とされた原子爆弾。ビキニ環礁の水爆実験による第五福竜丸事件。それに2011年、東日本大震災による福島第一原発事故。これほど原子力に影響を与えられた国が他にあるのか。

AKIRAくんが原子力であるならば、僕の中にもいてるし、みんなの中にもいてる。

最後になるが、超能力幼稚園児だけはまったく意味がわからなかった笑。数年後に見たらわかる時が来るのかな。今回はこのような社会性の部分に注目して鑑賞したので、今度見る時は、作画自体の素晴らしさ、音楽のかっこよさ、バイクのロマンといったところも刮目、刮耳して鑑賞したい。芸術的な意味合いでも満たされた気持ちになった映画であった。

ふと思ったが、太陽の塔に’アキラくん’という名前を付けたらしっくりきた







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